カミングアウト

まあ、何のかのと云って、オケ版の展覧会の絵はチェリ様とゴロワノフでしか聴かない、というくらいにはゴロワノフも好きだったりします。

チェリ様の展覧会はムソルグスキーラヴェルも超えた至高にして超絶の音世界ですがゴロワノフはステレオタイプにもほどがあるというくらいこってりとロシア!な演奏で、ラヴェルの編曲にかなりB級な手の入れ方をしているのですが、これがけっこういい味を出していたりします。最初のプロムナードのブラスの斉奏からして現代の聴き手の度肝を抜くに十分なものがあるでしょう。これぞロシアン・ブラスと云うほかない濃厚なヴィブラートが利いた音色にはクラっときますね(たぶん最初はあまり良くない意味で)。で最後にはドロンドロンとドラムロールが轟いたりしちゃって。

もう、ゴロちゃんったら。

これを聴くと、ソフロニツキーが断固としてこの曲を弾こうとしなかった理由も分かるというものでしょう。蓋しペテルブルグっ子からすればあまりにも泥臭すぎる音楽です。

全曲この調子で「考えたら負け」な演奏ですが、アツい激流がほとばしるカタコンブとかはタイトルを知らない人が聴いたら地獄の劫火が燃え盛っている様を想像するのではないでしょうか。ゴロワノフの辞書に瞑想という文字は存在しないと見えます。

悪趣味と云うのはたやすい(それこそ誰にだってできる)レコードですが、割り切ってしまえばこれくらい楽しい聴き物もないと、わたしも最近になって思うようになりました。しかし、いまHMVのサイトで検索をかけてみましたが、この展覧会の絵はひっかからない模様。これは人類の損失――とまでは口が裂けても云えませんが、残念です。