2010-04-01から1ヶ月間の記事一覧

『遺作変奏曲』について

シューマンの交響的練習曲には、遺作変奏曲と総称される五つの断章があります。作曲家本人が書いたはいいものの、推敲の過程で本編に含めることを断念した曲たちですが、無視してしまうには惜しい美質を含むため、コルトー以来それを本編とともに演奏するピ…

アレクサンドル・メルニコフ/リサイタル

テレビで、アレクサンドル・メルニコフのリサイタルをやっていたので見ました。二〇〇七年のライヴで、曲目は交響的練習曲とスクリャービンの幻想曲、作品三十二の詩曲、など。十数年前になりますが、このピアニストはいちど実演で聴いたことがあります。「…

続き、見ることあるのかなあ

テレビでモーツァルトの協奏交響曲(ヴァイオリンとヴィオラのための)をやっていたので見ました。ソリストはウィーン・フィルのコンマスのH氏とY響のソロ・ヴィオラ奏者のS氏、管弦楽はO氏指揮のY響です。で、見始めたはいいのですが、十分くらいでつらくな…

ハスキルのベートーヴェン/ピアノ協奏曲第四番(二)

(承前)一九五五年ライヴでは、同じ指揮者と組んだショパンの第二協奏曲もそうでしたが、「攻め」のハスキルを聴くことができます。コジャレたクの字の棒に対する反撥なのかしらん……というのは冗談として、彼女にかかる一面もあったことは記憶にとどめてお…

ハスキルのベートーヴェン/ピアノ協奏曲第四番(一)

ハスキルが弾いたベートーヴェンの第四協奏曲には六つの同曲異演があります。モーツァルトのニ短調協奏曲と比べたら半分くらいなものですが、それでもけっこうあるなあ、というのがわたしの印象。二回スタジオ録音している第三協奏曲よりおそらく多いし、実…

シゲティ/ハスキルのブゾーニ

ブゾーニのヴァイオリン・ソナタ第二番には、シゲティとハスキルによる、録音がのこされたことを神に感謝したくなるような夢の共演があります。ブゾーニの音楽の高貴な美しさがストレートに伝わってくる魔法のような演奏で(その点ロスタル盤には、良くも悪…

レフ・プイシュノフ

レフ・プイシュノフ(Leff Pouishnoff, 1891-1959)はロシア出身のピアニストで、ペテルブルグ音楽院でエシポワに学びました。プロコフィエフや、これはてっきりブリュメンフェリトの弟子とばかり思っていたのですが、シモン・バレルと同門にあたります。バ…

ロスタル/ミュートン=ウッドのブゾーニ

ミュートン=ウッドはマックス・ロスタル(参考にならない参考記事)のお気に入りのピアニストのひとりで、かれらは一九五二年にブゾーニのヴァイオリン・ソナタ第二番をスタジオ録音しています。レコードはウェストミンスターとアーゴからリリースされたとい…

ついでといっては何ですが

手許にあるチャイコフスキーの第二協奏曲をもう少し聴いてみます。有名どころでは、どういうわけかギレリスがちょくちょくこの曲を弾いており、三つの同曲異演がのこされているようです。そのうちわたしが聴くことのできた盤は、一九四八年、コンドラシン/レ…

ミュートン=ウッドのチャイコフスキー/第二協奏曲

チャイコフスキーのピアノ協奏曲第二番は、全集録音を手掛けるでもなければ弾くピアニストもめったにいない曲ですけど、ミュートン=ウッドの演奏(これまたDANTE盤全集中の一曲)は、思うに、かれの第一協奏曲にもましてすぐれた成果をおさめています。*1た…

ミュートン=ウッドのチャイコフスキー/第一協奏曲

ミュートン=ウッドによるチャイコフスキーのピアノ協奏曲第一番(DANTE)も、二十世紀音楽同様、大向こうをうならせるような演奏だとはいえないでしょう。この曲の名盤といえば誰しもが思い浮かべるであろうホロヴィッツやリヒテルとはかなり様相を異にする…

ミュートン=ウッド/二十世紀音楽集

ミュートン=ウッドの自死は、恋人の後追いというといかにもロマンティックなひびきを帯びてきこえるかもしれませんが、彼に親しい人々によれば、自分は正当に評価されていないという積年の不満もまた死の引き金に手をかける一因であったのでは、といい、ブリ…

リヒテル/ジョルジェスクのシューマン

リヒテル/ジョルジェスク/USSR響によるシューマンのピアノ協奏曲を聴きました。一九五八年のライヴ録音です(DOREMI)。ジョルジュ・ジョルジェスクはルーマニア出身の指揮者で、リヒャルト・シュトラウスとニキシュの薫陶を受け、帰国してのちは長くブカレ…

モーツァルトのヴァイオリン・ソナタ

セルゲイ・ハチャトゥリアンという若いヴァイオリニストの演奏で、モーツァルトの変ホ長調のヴァイオリン・ソナタ(ケッヘル番号は三七八)を聴きました。ピアノは彼のお姉ちゃん。これまた、上手い青年です(ヴィエニャフスキだのパガニーニだのではなし、…

とことんラテンな愉しいシューマン(主にオケが)

シェベック/フレモー/パドルー管によるシューマンのピアノ協奏曲をひさしぶりに聴きなおして、思った以上に楽しむことができました。シェベックのピアノは、劇的に盛り上がる場面など音の運びがいささかストレートにすぎて、スケール感に乏しい憾みがありま…

ミュートン=ウッドのシューマン/イ短調協奏曲

(きのうの続き)DANTE盤でカップリングされているシューマンの協奏曲はベートーヴェンと比べるとかなり特異な演奏で、とくに第一楽章は全曲が翳りに覆われており、第一主題が長調に転じるノクターン風の部分の甘美さもなければ、シューマンの若々しい情熱も…

ミュートン=ウッドのベートーヴェン/ピアノ協奏曲第四番

ベートーヴェンの第四協奏曲でわたしの好きな演奏のひとつは、ノエル・ミュートン=ウッドのレコードです(オケはワルター・ゲーア/ユトレヒト響)。ミュートン=ウッドはオーストラリア出身のピアニストで、シュナーベルに学びました。十八歳のロンドン・デビ…

これくらいのことはしょっちゅうです

わたしもちょくちょくお世話になっているこちらのサイト(申し訳ないけど、こういうあまりに直接的なタイトルをここに引き写す気にはなれません……)に、ソフロニツキーの音源がいくつかあります。ショパンの前奏曲は一九五一年録音とあり、ARLECCHINO から以…

レイ・チェン

NHK-BSでレイ・チェンのヴァイオリン・リサイタルを観ました。この青年、以前ちらっと触れた木嶋嬢もエントリーしていたエリザベート国際コンクールで一位優勝したという期待の星だとか。フランクのソナタの最初の一分を聴いただけで、これはいいなあ、と思…

フー・ツォン(承前)

一楽章のテンポに関しては、わたしはとくに遅いとは感じませんでした。二十分前後の演奏ならいくつか聴いていますが、なにしろその面子が濃い(笑)。 ユーディナ/ザンデルリング ギュレール/アンセルメ チェリ様/ペライア それより何より、ピアノのタッチが…

フー・ツォン

フー・ツォンは十年かそこら前、一度実演に接したことがあります。プログラムは、スカルラッティ、ハイドン、ショパン……あとシューベルトを弾いたでしょうか。手にものものしい黒いサポーター(?)を巻きつけており、聴いた印象でも、あまりコンディション…

ギトリスのチャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲

チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲で、たまーに聴きたくなる演奏のひとつに、イヴリー・ギトリスの若い頃のヴォックス録音があります。オケはホルライザー指揮のウィーン響。なんといっても、えらく闊達な弓さばきに耳を奪われてしまいます。ただ単に正…

期待はしているんだけど

NHKのBSで、ベレゾフスキーがチャイコフスキーの第一協奏曲を弾いていたので見てみました。とりあえず第一楽章。このピアニストは十数年前に一度ナマで聴きましたが、そのときとほぼ同じ印象。大体、あのヌボーっとした風貌そのままの音楽、といえば分かりや…

マタチッチのブルックナー/第五交響曲(承前)

(ここの続き)劇的な一楽章、ふかぶかとした――それでいて、いささかも重ったるいところのない二楽章の歌。これだけとってもブルックナー振りとしてのマタチッチの高い力量は瞭然としていますが、後半楽章こそ、壮年期のマタチッチのライヴの真骨頂というべ…

五分が我慢の限界

庄司某の独奏でチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を視聴しました。といっても最初の五分だけですが。それにしてもひどい。お金を払ってこれを聴きに行くひとがいるというのが信じられません。舞台姿そのままに貧相で美感のないヴァイオリンの音色。運弓…