2007-08-01から1ヶ月間の記事一覧

私的十大レーベル(三)

今更なんですが十も思いつくんだろうか……というわけで今日はBIDDULPHとPEARLでも。守備範囲が似ていることに加えて同じ頃全盛期を迎えたという共通点が二つのレーベルにはあります。円が一ドル七十円台後半まで行った一九九五年前後がそれにあたるでしょう。…

私的十大レーベル(二)

HUNTというレーベルがありました。ミトロプーロスやマデルナの顔写真をキッチュというかサイケデリックというかにアレンジした悪趣味なジャケット、というと「ああアレか」という方もおありでしょう。ところがARKADIAのCDを買って中身をあけたらHUNTのCDだっ…

私的十大レーベル(一)

きのう挙げた「心のふるさと」的レーベルが口からでまかせだったとは何となくお察しの方もおありかと思いますが、よくよく考えてみるとわたしの趣味をかなりの程度で反映していると認めざるを得ません。これらのレーベルのCDを聴きあさってゆく過程でわたし…

チェリビダッケとフランス国立放送管(九)

先日の続きということでシューベルト二曲です。交響曲第五番は、昔懐かしいARKADIAから出ていた既出音源です。ARKADIAといえばアレですよ、「最高傑作」とか「マスターピース」とか「ALL WE NEED IS LOVE」のアルカディア(分かる人だけ懐かしがってください…

可穂様と音楽

中山可穂といえば、わたしが最初に手にした動機は、どこかで目にした 「すごい!……なんてすごいの……ピアニストの指!」というセリフにぶっ飛んでの興味本位、でした(最初ここまでのめりこむとは思いもしなかったです)。だけど、人に紹介するとき軽い気持ち…

「モオツァルト」で思い出した

中山可穂の『猫背の王子』。新字新かなの文章のなかにまぎれこんだ「モオツァルト」はなおのこと凄まじい小林秀雄臭を放っています。# 『卒塔婆小町』では「モーツァルト」でした。まあ処女作だから仕方ないか、と思うしかなくて、それを言ったらキリがない…

ひとりごと

たまーに、旧仮名遣い表記のサイトがあります。でも、仮名遣いが完璧というためしはまずありません。ああいうのを見ると「何こだわってるつもりなんだろうか」という気にならなくもないところで。ふと思い出して「丸谷くん」というツールで自分の書いた文章…

チェリビダッケとフランス国立放送管(八)

以前取り上げたラ・ヴァルスの元ネタたるウインナ・ワルツをチェリビダッケは意外とよく振っています。ラヴェルは元来パロディーだから善き市民たる紳士淑女が踊るにはふさわしくない危険きわまる音楽になったのもむべなるかなですが、本家本元たる善男善女…

気を取り直して

ギーゼキングのシューマンですが、ダヴィッド同盟についですばらしいのが幻想曲でしょう。すでに書いた通り渦巻く情熱に圧倒されます。イ短調協奏曲は、フルトヴェングラーとの共演が有名ですね。二楽章の第二主題で、ロマンのきわみ――の一語に尽きるフルト…

余談

ARCHIPEL盤のダヴィッド同盟舞曲集は一九四二年録音とクレジットされていますが、ギーゼキングのディスコグラフィー(先述のTAHRAのCDにくっついています)を確認すると、一九四七年以前のこの曲の録音は存在しません。このレーベルらしい誤記といってしまえ…

ギーゼキングのダヴィッド同盟舞曲集

(承前)これは『アラウとの対話』の中で「たった一度聴いたこの曲の名演奏」とまでアラウが褒めちぎっていたのに興味を抱いて聴いたものです。この曲集には良い演奏があまり多くないように思いますが、問題があるとしたらそれは、物語性(謝肉祭、子供の情…

ギーゼキング(続き)

前回は結構キツいなこと書きましたが、同じCDセットのドビュッシー、ラヴェル集を聴いて、このピアニストはけっこうムラっ気があるというか、聴き手にとっては評価が難しい人だなあと思いました。一曲目のベルガマスク組曲。プレリュードはのっけからメトロ…

ギーゼキング

ギーゼキングのブラームスといえばベルリン時代のチェリ様と第二協奏曲を共演して意気投合、終演後ジャズの連弾を楽しんだとかいう逸話が伝わるのですが、残念ながら録音は残っておりません。というわけで協奏曲の一番を聴いてみました。オケはロスバウト指…

今更ながら

往年の巨匠ネタが入っていよいよ支離滅裂なコンテンツになってきました。これは一般論ですが、チェリ好きは意外とヒストリカルを聴かない(基本的に彼らはコンサートゴアーなんだと思います)し、歴史的録音マニアはチェリを眉唾ものと思い込んでいます。タ…

何のかのと言って

先述の十枚組をわたしはけっこう良く聴きます。「最初のピアソラ」としては不適切としても、これでしか(現時点では)聴くことの出来ない音源が含まれていますし、何といっても値段が安いのだから、買って損ということはないと思います。MEMBRANのライセンス…

どうせなら全曲ホルショフスキと……

シゲティはホルショフスキと組んでモーツァルトのソナタ集を録音しています(VANGUARD CLASSICS)が、そのうちの二曲は特別参加で指揮者のセルが伴奏を務めています。このセルのピアノ、世間では実に良い評判なのですが、わたしに言わせれば「臆面もない」の…

チェリビダッケとフランス国立放送管(七)

ルーセルの第三交響曲も、WME盤(WME-S-CDR-1125)が初出のレパートリーです。以前ちらっと触れたようにEMI正規盤の小組曲とヘ調の組曲があまりにすばらしかったので、演奏記録の伝わるシンフォニーをぜひ聴いてみたいものだと思っていたところでした。ルー…

ピアソラ/ゴジェネチェ

「よれた声」とか「淀んだ歌い口」と書いてあるからそれなりに覚悟はしてたつもりだったけど、予想を越えてすごいことになっていたロベルト・ゴジェネチェ。ピアソラと共演したリサイタルのライヴ録音ですが、何がすごいってマーキュリー録音のシゲティもび…

冷静になるまでもなく

とっつきにくい文章ですな<わたしの残暑見舞い少し反省して……普段タンゴを聴かないけどアストル・ピアソラの名前くらいはご存知の方は結構多いのではないでしょうか。一昔前にクラシックの世界で所謂「クロスオーヴァーもの」としてピアソラが流行しました…

残暑お見舞い申し上げます

という季節になって猛烈に暑くなってくるとはどういうわけか。ともあれ季節はずれにならないうちにブエノスアイレスの夏を聴いてみます。なにしろ「ピアソラのスタンダード」だからアレンジ(自作自編)も色々あるはずで、最初期ヴァージョンとかカチョ・テ…

海とチャンバラ

というわけで聴いてみました、ベルリン・フィルの海(……何でやねん)。一九四八年ライヴですが結構音は良いです(MUSIC & ARTS; CD 1079)。栴檀は双葉より芳し、で明瞭にチェリビダッケの個性が刻印されています。 ピンと意思的なものが張り詰めたフレージ…

チェリビダッケとフランス国立放送管(六)

先述したように、チェリとフランス国立放送管のライヴは数こそ少ないものの昔からポツポツとリリースされていました。プロコフィエフのロミオとジュリエットのようにCD-Rで再出したものもありますが、一九七四年ライヴの海はたしかANFで一度出たっきりではな…

チェリビダッケとフランス国立放送管(五)

(まだまだ続く)≪ロザムンデ≫序曲は豊かな陰影、彫りの深さにおいて際立ち、現に生きるシューベルトの力強さを感じさせるでしょう。柔らかな幻想味(たとえばコンツェルトハウスの奏でる弦楽五重奏曲のような)を求めるなら他の演奏を当たらなくてはならな…

チェリビダッケとフランス国立放送管(四)

(まだ続く)ドヴォルザークのチェロ協奏曲もけっこう同曲異演があるはずで、同じフルニエ/ORTF管とはスタジオで映像収録も行われています。わたしが聴いたことがあるのはマヒュラ/ベルリン・フィル、デュ・プレ/スウェーデン放送響、シフ/ミュンヘン・フィ…

チェリビダッケとフランス国立放送管(三)

ラ・ヴァルス、メタボールと来たのでベートーヴェンの七番も聴いてみます。この曲はチェリの十八番だけあって録音も数多く、わたしが聴いた限りでもフランス国立放送管盤が四つ目の同曲異演となります(もうひとつ半端モノもあり)。 シュトゥットガルト放送…

チェリビダッケとフランス国立放送管(二)

先日取り上げたラ・ヴァルスが収められている(WME-S-CDR-1105/6)は二枚組CD-Rで、一九七四年十月の演奏会をアンコールまで収録したものです。 シューベルト:≪ロザムンデ≫序曲 ドヴォルザーク:チェロ協奏曲 デュティユー:メタボール ラヴェル:ラ・ヴァ…

チェリビダッケとフランス国立放送管(一)

そろそろ好き放題行きます。チェリビダッケは一九七三年から七五年にかけてフランス国立放送管にしばしば客演しました。その記録が、以前からぽつぽつ出ていたのですが、最近集中的にリリースされました(もっと出るのでしょうか。だったらうれしいのですが…

音楽の流れに身をゆだねて

(承前)チェリ道の先達、齋藤純一郎氏は「チェリビダッケ以前とチェリビダッケ以後」すなわち「どんな曲であれチェリビダッケの演奏を聴くと、それまで持っていた先入観念がガラッと変わってしまうという現象のこと」*1について語っておられますが、これは…