私的十大レーベル(二)

HUNTというレーベルがありました。ミトロプーロスやマデルナの顔写真をキッチュというかサイケデリックというかにアレンジした悪趣味なジャケット、というと「ああアレか」という方もおありでしょう。

ところがARKADIAのCDを買って中身をあけたらHUNTのCDだったということがたまにあります(クレンペラーやフィッシャーの数枚のCDで確認しました)。

どういうわけかというと話は結構単純で、同一人物が立ち上げているレーベルなのです(HUNT→ARKADIA?)。

同じことがARLECCHINOとDANTEについても言えるでしょう。

こちらに関しては同一人物のプロデュースという確証はありませんが、厚紙ケースに入った体裁(わたしたちは一緒くたに箱入り娘と呼んで親しんだものです)、ARLECCHINO消滅後にDANTE入りしたユーディナ・コレクション……などなど、傍証には事欠きません。あくまで推測ですが、DANTEの覆面レーベルがARLECCHINOであったように思われます。

DANTE=ARLECCHINOの特徴はとにかくマニアックで濃ゆいラインナップに尽きるでしょう。DANTE盤のほぼ全てで解説を書いているジャン=シャルル・オフレというおっさん(なんちゅう守備範囲の広さ……!)の趣味が強く出ていると思われ、ARKADIAの玉石混交とは一線を画しています。

ピアニストに限っても、ノエル・ミュートン=ウッドのコンチェルト集、ユーラ・ギュレールのデュクレテ・トムソン録音、ロシアのピアニスト・シリーズ(ソフロニツキー、ギンズブルグ、フェインベルグ、ユーディナ、グリンベルグ、ゴリデンウェイゼル、イグムノフ、ゲンリヒ・ネイガウス……)と挙げていっただけでムシュー・オフレのマニアぶりは窺い知れるというものでしょう。アンドレチャイコフスキーやジョーゼフ・ヴィラなど、オフレ氏と親交のあった音楽家たちのCDも氏のセンスを証明するに足る逸品揃いです。

難を挙げればあまり良い機材を使っているとは思えない復刻状態、今ひとつ散発的で体系性に欠けるリリース……などでしょうか(演奏後五十年経っていない録音のデータ改竄なんてのも散見されます)。後年のアンセルメ・エディションなどではそのような弱点を徐々に克服して従来からの腐れ縁的ダンテ・フリークを瞠目させましたが、柄にもないことをするもんじゃありませんな、それからしばらくして潰れてしまいました。アンセルメデゾルミエール、ジョルジェスクのリリースが途絶してしまったことは実に悔やまれます。

しかし思いもしなかったところで懐かしい出会いがありました。

仏EMIのLES RARISSIMESシリーズといえばフレイタス=ブランコやウーブラドゥ、ジョルジュ・ツィピーヌ、等々ARTシリーズとは異次元のマニアックなラインナップでわたしたち愛好家を狂喜せしめた近来稀に見るスマッシュ・ヒットですが、その解説で、REFERENCESシリーズなどでおなじみのAndré Tubeufを押しのけてムシュー・オフレが健筆を振るっているのです。

いやー、DANTEが潰れたときはてっきり死んでもうたのかと思い込んでいただけにこれはうれしい驚きでしたねえ。ハイドシェックの日本における人気の秘密を「ウタマロ・スタイル」とか何とかゆうとるあたり、相変わらずで目頭が熱くなります(笑)。