リヒテルのガーシュウィン

リヒテルが弾くガーシュウィンのピアノ協奏曲がHAENSSLERから出ました。このCDについて「こんなのジャズじゃない」という非難の声が一部から寄せられているようで、それも一見もっともなのですが、当のリヒテルはこんなことをいっていたとご紹介しておきまし…

あけましておめでとうございます

昨年の聴きおさめはエネスコの無伴奏、新年の聴き初めはチェリビダッケ/フランス国立放送管のヨハン・シュトラウスでした――ハイ、相変わらずでございます。こんな調子で、更新のペースもあまり上がらないと思いますが、今年もよろしくお願い申し上げます。さ…

ピアソラとロビーラの《シンプレ》が同じ曲にきこえない件

わたしの酷愛する名ピアニスト、オスバルド・マンシのアルバム《視聴覚のタンゴ》を聴きました。彼のピアノと、ルベン・ルイスのエレキ・ギター、ベニーニョ・キンテーラのコントラバスによるトリオ編成で、十曲中三曲に歌が入っています(エクトル・モラー…

APRのコルトー戦後録音第四集

APRはここ数年にわたってコルトーの戦後録音(なかには貴重な未発表音源も含まれます)を復刻してきましたが、このたび第四集がリリースされました。主に一九五三年から翌年にかけてのテープ録音が収録されています。少々予想外だったのは今回がシリーズ最終…

人気と実力の不相関について

タワーレコードから復刻された、ホルショフスキのNONESUCH録音集成を聴きました。このピアニストがカザルス・ホールのオープニング・コンサートのために来日してベーム以来の熱狂を引き起こした一九八七年前後、年齢でいえば九十四歳から九十八歳にかけての…

ヴァント、ケルン放送響のブルックナー/交響曲全集

ふだんはあまり聴かないヴァントですが、馬鹿みたいな廉価に思わずポチってしまいました(^^;六十代と、指揮者としてはまだこれからという時期の演奏ということもあってかスケール感は控えめですが、いくら強奏してもまったく雑味がまじらないブラスのユニ…

届きました!

やっと手元に到着しました、フランソワ箱。*1最近はCD十枚のボックス・セットなどごく当たり前のように出ているのでそれくらいでは驚きもしませんが、さすがに三十六枚分のズシっとくる重みにはシビれますねえ……カラスの七十枚組以来でしょうか(^^ ;もひと…

たのしみ

『ロシア・ピアニズムの系譜』でも絶賛されていたサンヴェル・アルーミアンのプライヴェートCD*1が裏青でリリースされるようです。http://www.aria-cd.com/arianew/shopping.php?pg=54/54newcdr露骨にも程があるデジタル・コピー。すなおに喜んでいいことで…

真にすばらしい、驚くべき音楽家

先日、某巨大動画サイトでたまたま御喜美江さんが弾くピアソラを聴いて、あまりのすばらしさに驚倒しました。生き生きとしたリズムといい、雄弁なアクセント、フレージングといい、まさしくピアソラが望んだであろうとおりに力強くスウィングしており、クラ…

とうとう出ますね!

ごぶさたしております。 更新もサボりたおしてボーっとしていたら、うれしいニュースが。http://www.hmv.co.jp/product/detail/3906661フランソワのEMI全録音+αです。わたしもこのうちCD二十七枚分は所持しているのですが、ほかに九枚分未聴ものがあるのか…

コルトーのショパン/第一バラード(五)

一九三三年盤は、一見、最初の録音に先祖帰りしたかの観ある演奏です。たとえば、第一主題で左手にスコアでは指示されていない強弱をつけたり*1するのもそうですし、フレージングの抑揚にいたっては二六年盤に輪をかけて濃密です――こう書くと「お前のいって…

コルトーのショパン/第一バラード(四)

(承前)――こう書くと、二九年盤はさもいいことづくめのように思われるかもしれません。いかにも、コルトーの同曲異演中もっとも万人受けしうるのは、おそらくこの演奏でしょう。ショパンの形式感が尊重されているし、技術は安定している――ということはすな…

ヴィルサラーゼのラヴェル/左手のための協奏曲

某巨大動画サイトでヴィルサラーゼの弾くラヴェルの左手のための協奏曲を視聴したのですが、これがユーディナもビックリというハード路線でした。美感とかニュアンスとかいったたぐいのものが含まれる余地のまったくない、強靭な意志の塊そのものの重く武骨…

コルトーのショパン/第一バラード(みたび)

(こちらの続きです)こうしてふたつのレコードを聴いて感じたのは、相性ということでした。一九二六年盤は、思うに解釈やスタイルに関してそれほど自覚的でなく演奏されたもので、コルトーの心づもりとしては、ウェーバーやリスト、シューマンを弾くときと…

二年前からあったものらしいですが

例によって某巨大動画サイトをみていたら、チェリビダッケがシチリアのオケを指揮した動画にゆきあたりました。一九六五年のライヴだそうで、わたしはこれまで聴いたことのなかった顔合わせです。画質はアレだし、音もモノラルのAMラジオみたいですが、変換…

ムラヴィンスキーの第五交響曲

……というと、チャイコフスキーかショスタコーヴィチを思い浮かべる向きが多いであろうと思いますが、ベートーヴェンの第五もそれに優るとも劣らぬ、ムラヴィンスキーならではの境地をいまに伝えるものです。この巨匠の常で同曲異演が複数あり、なかでは唯一…

コルトーのショパン/バラード第一番(承前)

(こちらの続きとなります)すでに述べたとおり、一九二九年盤は旧バラード全集の一部をなすものですが、HUNTのディスコグラフィーによれば、第一バラードはほかの三曲が二九年の三月十一日に録音されたあと、この曲のみ同年六月七日に吹き込まれた演奏だと…

ためしに、冗談半分で……

先にものした一文を、漢字で書けるところはむりやり漢字にして、某丸○君で正字正仮名変換してみたのが以下に掲げるものです。もともとがたいがいの悪文ですが、こうすることによってより悪くなりこそすれ、少しでも良くなったとは、まっっったく思えません(…

ひとりごと

塩野七生女史の『サイレント・マイノリティ』のページをめくっていたら、こんな句が目にとまりました。 この頃のワープロ作文の台頭には、漢字がやたらと使われているのだけでも、私は憤りを禁じえないでいる。ワープロを使って書いたものは、ひとめでわかる…

両立はむずかしい?

(コルトーのほうはちょっとひと息……)ブルックナー指揮者はマーラー振りたりえず、その逆もしかり――なんてことが世にいわれますが、その伝で、ハイドンとモーツァルトも両立しがたいレパートリーらしいです。いわれてみれば、とまず思い浮かぶのはフルトヴ…

コルトーのショパン/バラード第一番

ここではバラード第一番を例にとりましょう。プレリュード集やソナタより一つ多い、三つの同曲異演を比較しうる便がありますし、各演奏を聴きくらべてゆくことを通じて、佐藤泰一氏をして「バラ一といえばコルトー、コルトーといえばバラ一」とまでいわしめ…

コルトーのショパン(承前)

コルトーはショパンの作品を幅広く取上げたのみならず、多くの曲を繰り返し弾いており、葬送ソナタや前奏曲集は、それぞれ五種の同曲異演を聴くことができます。それぞれ十一種あるフルトヴェングラーのエロイカや第九に比べれば一見かわいいものと映るかも…

コルトーのショパン

限られた曲目を繰り返し取上げるというイメージの強いコルトーですが、ことショパンに関しては、ソナタの一番や番号のないポロネーズ、マズルカといった類の若書きの作品は別として、独奏曲のあらかたを録音しています(ただし、今に至るまでマズルカの全集…

エロイカとトロンボーン

ご案内のとおり、ベートーヴェンの第三交響曲はトロンボーンが編成のうちに入っていません。先日ブロムシュテットがN響に来演してこの曲を取上げたときは前プロが同じ作曲家の第五ピアノ協奏曲で、これまたトロンボーンを必要としない楽曲でした。その辺は、…

再説ブリュショルリ

すでにご紹介したブリュショルリのエジプト風をinaのサイトで聴きましたが、以前に触れたDOREMI盤と比較して良くも悪くもよりライブらしい演奏――というのがわたしの印象でした。エキサイトする場面での崩れはより甚だしくなり、ここでピアノは主役じゃないん…

第一報

某巨大動画サイトに、ユーラ・ギュレールのリストのソナタが上がりました。わたくし、ギュレールの芸術を賛仰することにかけては人後に落ちないつもりですが、五十年代半ばのデュクレテ・トムソン録音と七十年代のエラート/ニンバス録音とでは天と地ほども芸…

清水靖晃の≪ゴルトベルク変奏曲≫(と書いて、「トシヨリノヒヤミズ」と読む……!?)

テレビで清水靖晃&サキソフォネッツの演奏会を観ました。清水氏の編曲するところのゴルトベルク変奏曲の抜粋です(一時間番組だったため)。面白かったですが、それにしても色々と考えさせられる演奏でした。まず編成の特異さに驚かされます。サキソフォン…

ヘンリク・シュトンプカのマズルカ

コレを買わないと聴くことのできなかったヘンリク・シュトンプカのマズルカを某巨大動画サイトで視聴することができます。作品番号付きの曲は全て公開されており、*1いい時代になったもんだとつくづく思いました(例によって直接リンクを張りませんがあしか…

ロストロ御大でさえコンチェルトは弾かなかったはず……

ユリア・フィッシャーというヴァイオリニストはピアノもやるんだとか。某巨大動画サイトでたまたまグリーグのピアノ協奏曲の映像を観ました。こんど、彼女がサン=サーンスの第三ヴァイオリン協奏曲とグリーグの協奏曲を弾くDVDがリリースされるという話を聞…

inaの音源リスト/落穂拾い(管弦楽曲篇)

inaのサイトはサーバーか何かに問題があるものとみえて、"Paul Paray"と打ち込んで検索しても出てこなかったファイルが"Fauré"をキーワードで探すとヒットする、というようなことがままあります(後述)。検索エンジンの精度が低いのでしょうか。 パレー/ベ…