ロストロ御大でさえコンチェルトは弾かなかったはず……

ユリア・フィッシャーというヴァイオリニストはピアノもやるんだとか。某巨大動画サイトでたまたまグリーグのピアノ協奏曲の映像を観ました。こんど、彼女がサン=サーンスの第三ヴァイオリン協奏曲とグリーグの協奏曲を弾くDVDがリリースされるという話を聞きましたが、これがもしかしたら件のグリーグかもしれません。

彼女のヴァイオリンは以前に少しばかり聴いたことがありますが、ひとことでいえば十歳にもなっていない少女がテクニックだけオトナなみに達者になったかのような演奏で、わたしは聴いていてこれっぱかりもグッとくるものを感じませなんだ。*1以前某所で「ティボーはパテに限る」という珍説を目にしたことがあり、こともあろうにHMV録音の成熟した香気を厭うとはこの御仁、ロリコンか何かじゃなかろうかと驚きあきれた覚えがあるのですが、その某氏にはオススメできるでしょうか!?

(わたしとて趣味は人それぞれということは重々承知しているつもりで、ティボーを好まない人があるからといってそれをとやかく申したりはしますまいが、同じティボーのHMV録音がダメで、パテがよろしいとはねえ……わたしには、『妻は告白する』をさしおいて『十代の性典』を若尾文子の代表作だと強弁するたぐいの業としか思えません)*2

というのはさておき、古来マルチタレントは数多いですけど、あのハスキルでさえ幼少のみぎりから慣れ親しんでいたヴァイオリンをある時点であきらめてピアノ一本に専心しています。彼女の万分の一も才能があるとは思えないユリア嬢が両刀遣いを志すとはちと冗談がすぎるというものじゃなかろうか――というのが前述DVDのリリース情報に接したときわが脳裏をかすめた思いですが、今回グリーグを聴いて、予感は確信に変わりました。

*1:モーツァルトの協奏曲ででもあればまだしも聴けたか知れませんが、よりによってカルメン幻想曲でしたからねえ――色気のイの字もありやしない。

*2:何だかんだいって見てみたいんだけどね……(^^;;;>『十代の性典』