2008-06-01から1ヶ月間の記事一覧

ミトロプーロスふたたび

ついでにほかの指揮者のシューマンの一番も聴いています。むかし、ミトロプーロスがニューヨーク・フィルを振った春(DISCANTUS)を聴いたときは、金管が異常に突出しているとげとげしい響きに辟易して「これだからアメリカのオケは……」と思ったものでした。…

ミラノの春

チェリビダッケは後年に至るまでシューマンの交響曲をしばしば取り上げましたが、第一番だけ、残念ながらミュンヘン・フィルとの録音を聴くことができません。うちにあるCDは以下の四枚です。 シュトゥットガルト放送響(一九六三年ライヴ、ARLECCHINO) ミ…

前衛――それは漢のロマン

シェーンベルクの音楽は余程のことがないと聴きませんが、たまに思い出したように取り出してみる演奏があります。シュトイアーマンとシェルヘンが共演したピアノ協奏曲のライヴ録音です(ヘッセン放送響、一九五四年)。シェルヘンといえばもっとも熱烈な同…

アドルフ・ブッシュのブランデンブルク協奏曲第五番

アドルフ・ブッシュの弾き振りしたバッハ(管弦楽組曲とブランデンブルク協奏曲の全曲)はメンバーが当時第一線で活躍していた名手揃いなことで知られていますが、コンチェルトの五番のソリストはブッシュとモイーズ、そしていつものゼルキンです(PEARL)。…

ベルナックの『詩人の恋』

スゼーのお師匠さんのひとり、ピエール・ベルナックも『詩人の恋』を吹き込んでいます(TESTAMENTの三枚組)。残念ながらピアノはいつものプーランクではなくジェラルド・ムーアでした。ベルナックはオペラの舞台にほとんど上ることなく、知性派歌手としてキ…

ミトロプーロスのバッハ

ブランデンブルク協奏曲第五番の珍品としてはミトロプーロスの弾き振りなんてものもあります(DISCANTUS)。あの、プロコフィエフの第三協奏曲の弾き振りが名物だったムチャな火星人。オケはNBC響で、ソリストの名を詳らかにしませんが、オケの奏者と見てま…

エトヴィン・フィッシャーのブランデンブルク協奏曲第五番

マーラーが腕に指揮棒をくくりつけてチェンバロを弾きながらバッハの管弦楽組曲を指揮したとかいう故事も伝わりますが、バッハやモーツァルトの協奏曲を「弾き振り」する慣習を現代に復興せしめたのは何と云ってもエトヴィン・フィッシャーである、とされて…

メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲

といえばイザイ、イザイといえばメンコンです。フィナーレだけの抜粋であろうが、録音(一九一二年のアコースティック吹込)が古かろうが、これ以上の演奏は考えられないんだから仕方がない。レコーディングに対して懐疑的であった巨匠自身も「こんなに上手…

ブッシュの無伴奏

エルマンやクライスラー、ティボーといった美音で鳴らしたヴァイオリニストに比べて、ブッシュにはいかにも地味な印象があるかもしれません。しかし、そんなことはないぞ、と目を見開かせてくれるのが無伴奏パルティータ第二番の一九二九年録音です。今回ひ…

スゼー/コルトーの『詩人の恋』

コルトーの五十年代のシューマン録音がグリーンドアから復刻されています。この盤のメインはフリッチャイとの協奏曲ということになるでしょうが、スゼーと共演した『詩人の恋』も、それに優るとも劣らない逸品です。その上にこちらは(たぶん)正真正銘の初C…

アニー・フィッシャーのブランデンブルク協奏曲第五番

わたしが知らないだけか知れませんが、アニー・フィッシャーにはバッハを弾いた録音がほとんどなかったような気がします。バッハ=ブゾーニなんかさぞやすばらしく弾いただろうに、と思うのですが……というわけで、わたしの知る限りで唯一の彼女のバッハ録音は…

プシホダのシャコンヌ

ブッシュ、エネスコと聴いた流れで、ほかのヴァイオリニストの無伴奏をいくつか聴きました。その中でもとくに珍品の部類に入るのがプシホダのシャコンヌでしょう(PODIUM)。四十年代以降熱意をこめて取り組んだものの、ヨアヒム・ハルトナックからは「プシ…

エネスコのホ長調協奏曲

ブッシュを聴いてエネスコを聴かないのも変なような気がしまして。エネスコの演奏は、一九四九年アメリカはイリノイ大の管弦楽団(指揮はKuypersなる御仁)と共演したライヴ録音で、同日演奏のベートーヴェンの協奏曲とカップリングされています(BIDDULPH)…

モーツァルトのピアノ・ソナタ第十二番

エッシェンバッハのほかに聴いたなかで、とりわけ良かったのはアニー・フィッシャーの一九八四年ライヴでした(PALEXA)。一九一四年生まれのこのピアニストとしては公開演奏の機会がかなり稀なものとなりつつあった時期、端的にいえば彼女の晩年の演奏にあ…

ドイツ本流といっても色々で

むかしからLPマニアの間で評価が高かったらしいラインホルト・バルヒェットの録音が最近デンオンからCD復刻されました。再評価の気運が高まりつつあるということでしょうか。今回わたしが聴いたのはバッハの協奏曲です。共演はティーレガントという初耳の指…

エッシェンバッハのモーツァルト

ふと思い立ってモーツァルトのピアノ・ソナタ第十二番の同曲異演をいくつか聴いてみたなかに、エッシェンバッハがありました。一九六九年録音ですから、吉田秀和翁に衝撃を与えた東京リサイタルの三年前の演奏にあたります(新潮文庫の『世界のピアニスト』…

未来の完璧主義者

きのうの続きになります。実は、天下御免の名盤と知られたラヴェルの協奏曲のEMI盤を聴いていません。わたしがもっぱら聴いているのはチェリと共演したふたつのライヴ録音で、今回さらに一九五二年のライヴが加わった次第です。一聴、歴然と一音一音が濃密で…

モーツァルトとミケランジェリ

モーツァルト:ピアノ協奏曲第十三番 (ジュリーニ/ローマRAI響) ラヴェル:高雅にして感傷的なワルツ 同:ピアノ協奏曲(サンツォーニョ/トリノRAI響) ミケランジェリ(一九五一/二年ライヴ、伊URANIA)モーツァルトを聴くとき、ひとはことさら贅沢に陥る…

最初の読者……か

最近『カラマーゾフの兄弟』や『赤と黒』の新訳をめぐる誤訳騒動が立て続けに起きていますが、これは決して偶然事だとは思えません。何も亀山氏や野崎氏の語学力にイチャモンをつけるわけではありませんよ。わたしが云いたいのは、誤訳するのはたしかに訳者…

ディーン・ディクソン

あれだけでこんな指揮者かと思われてもかわいそうなので、ディーン・ディクソンの録音を聴いてみました。うちにあるのは合わせ物のみで、 プロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第一番(フェラス、ヘッセン放送響) ベートーヴェンのピアノ協奏曲第四番(ハス…

ある記録

先日とりあげた田中希代子の『エジプト風』は一九六五年、彼女の全盛期の記録でしたが、同じCDに収録されたサン=サーンスの第四協奏曲は一九六八年、すでに膠原病が発症していた時期に病身をおしての出演です。伴奏はディーン・ディクソン指揮のN響。これは…

感覚のズレ

美人女優として一世を風靡したひとがどうしてもキレイには見えない、という経験はおありでしょうか。わたしの場合入江たか子や京マチ子がそうです。自分の眼がイカレてるのか、世間がおかしいのかなんて考えたって仕方がない。好き嫌いでいえば全く受け付け…

エジプト風

田中希代子/ピエール・デルヴォー/N響(一九六五年ライヴ、キングレコード) 田中希代子のとびきりの名演奏というと、サン=サーンスのピアノ協奏曲第五番がまず上げられるのではないかと思います。――そこの「なんだ、サン=サーンスか」と思ったあなた。わた…