2009-09-01から1ヶ月間の記事一覧

訂正

レコードのマトリクス番号について認識に不十分なところがありましたので謹んで訂正いたします――というのは、マトリクス番号は各セッションごとに連続的に割り振られる原盤の通し番号だとばかり思っていましたが、ビクターでは、同じコルトーが同じ曲を弾い…

コルトーのテクニックと「まことの花」(五)

同じコルトーの演奏に対する彼我の印象の相違は、畢竟「どちらを先に聴いたか」によるのかもしれません。両野村翁は二十年代の演奏を通じて「コルトーのショパン」に親しんでいたからこそ、再録音に接するに至って「彼や昔のかれならず」の嘆が大きかったの…

コルトーのテクニックと「まことの花」(四)

現在はコルトーを代表する演奏群とみなされている一九三三年から翌年にかけてのショパン・レコーディングですが、同時代の評判は必ずしも無邪気な礼賛というわけには行かなかったようです。先にちらと触れていますように、あらえびすは一九三三年から四年に…

コルトーのテクニックと「まことの花」(三)

一九三三年というとコルトーは五十六歳ですが、その彼がレコーディング・セッションで以前ほど録リ直しをしなくなったのはどのような事情によるのでしょうか。ひとつには当時の厳しい経済情勢から制作サイドがシビアになったという可能性もあります*1が、や…

コルトーのテクニックと「まことの花」(二)

コルトーは若い頃は上手かったけど、その後がなあ、ということが良く云われます――実際、サン=サーンスの「ワルツ形式の練習曲」のアコースティック録音の見事な出来は、これを聴いたホロヴィッツが夢中になって、その技を盗むべくコルトーに教えを請うた*1ほ…

コルトーのテクニックと「まことの花」(一)

SP録音の復刻CDのライナーノートには大抵「録音データ」が記載されていますが、新星堂の『アルフレッド・コルトーの遺産』シリーズの場合以下のようになっております。 Octover 27, 1926 (A 27347, DB 1145) *1 一見するとさながら暗号のごとしですが、一九…

コルトーの未発表録音(承前)

(ここの続きです)繰り返しになりますが、この演奏を聴く者にとって躓きの石となるのは、何といってもそのあまりにも特異なテンポ設定でしょう。このテンポの遅さたるや、ようやっと弾いている、という感じがするのは否みきれませんし、最盛期のコルトーで…

コルトーの未発表録音

最近ふしぎとコルトーづいてまして、完全初出のショパンの協奏曲を聴くことができたと思ったら、某巨大動画サイトにとんでもないものがありました。「コルトーの」シューマンのピアノ・ソナタ第二番、です。Malik氏のディスコグラフィー(残念ながら、今とな…

フランソワのスカルボ

一九四三年に開催された第一回のロン=ティボー・コンクールに優勝したのはヴァイオリン部門がミシェル・オークレール、ピアノ部門がサンソン・フランソワでしたが、前者が「優勝記念」ということで師匠のティボーと共演してハイドンのヴァイオリン協奏曲第一…

ゴロワノフのボロディン/交響曲第二番

ゴロワノフのロシア物は、展覧会の絵や一八一二年のような個性暴発系の演奏と、スクリャービンやグラズノフといったフツーに良い演奏とに大別されるように思います。ボロディンの第二交響曲に関していえば、以前マルチソニック盤で聴いたときの衝撃たるや、…

ジョセフ・フックスのベートーヴェン

ジョセフ・フックスとアルトゥール・バルサムによるベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタを聴きました。ナクソスから三枚に分かれて全曲が復刻されていますが、今回手にしたのは五番、六番、七番の三曲が収められた一枚です。一九五二年の録音で、リマスタ…

コルトーの初出録音(二)

(承前)ショパンのピアノ協奏曲では第一番の方が歴然と高いポピュラリティーを獲得していて、それはショパン・コンクールの主だった勝者(たとえばアルヘリチやブーニン)が大抵本選で第一を選んで弾いていることからも窺われますが、なかには第二を贔屓し…

コルトーの初出録音(一)

遅ればせながら、コルトー/メンゲルベルク/パリ放送大管弦楽団によるショパンの第二協奏曲(MALIBRAN)を聴きました。これまで聴くことのできたコルトーのライヴ録音でもっとも古いものは一九四七年のベートーヴェンの第一協奏曲でしたが、今回の録音は一九…