ベルナックの『詩人の恋』

スゼーのお師匠さんのひとり、ピエール・ベルナックも『詩人の恋』を吹き込んでいます(TESTAMENTの三枚組)。残念ながらピアノはいつものプーランクではなくジェラルド・ムーアでした。

ベルナックはオペラの舞台にほとんど上ることなく、知性派歌手としてキャリアを全うしたと伝えられますが、「知性派」すなわち声に魅力がないことの謂ではあります。特にスゼーのあとに聴くとなると……解釈も知が角に立つ感じで前半のナンバーは少なからず艶消しですが、その分『恨むまい』あたりからグッと面白くなります。これでピアノも「語る」タイプの演奏だったらさすがにクドいかもしれないので、淡々とした、それでいて不足を感じさせないムーアは適材適所というべきでしょう。

……しかし、こういう曲だからこそプーランク腹の探り合いをしてるような演奏が聴きたかったかも(野次馬根性丸出し)。