チェリ

二年前からあったものらしいですが

例によって某巨大動画サイトをみていたら、チェリビダッケがシチリアのオケを指揮した動画にゆきあたりました。一九六五年のライヴだそうで、わたしはこれまで聴いたことのなかった顔合わせです。画質はアレだし、音もモノラルのAMラジオみたいですが、変換…

両立はむずかしい?

(コルトーのほうはちょっとひと息……)ブルックナー指揮者はマーラー振りたりえず、その逆もしかり――なんてことが世にいわれますが、その伝で、ハイドンとモーツァルトも両立しがたいレパートリーらしいです。いわれてみれば、とまず思い浮かぶのはフルトヴ…

ina.fr がスゴすぎる件について

コルトーのシューマンの第二ソナタを発見したときをも超える衝撃です。先日、ネットサーフィンしていたらフランソワに対する深い思いにあふれたあるサイトにたどり着きました。そこで紹介されていたのが、フランソワがバルトークの第三協奏曲を弾いている音…

マ・メール・ロワ(承前)

(ここの続きと思ってください)何のかのといって、オリジナルの組曲版によるチェリビダッケ/ロンドン響のライヴこそはわたしにとって至上のマ・メール・ロワです。先師のラヴェルはいずれ劣らぬ名演揃いですが、なかでもこの演奏は、フランス国立放送管を振…

ルガノのチェリビダッケ

ずいぶん以前のことですが、チェリビダッケがスイス・イタリア語放送管を指揮した映像(cf.→HMV)がリリースされました。一九七五年のライヴで、曲目は古典交響曲、マ・メール・ロワ、ベートーヴェンの第七交響曲、というチェリ様の十八番揃い。画像の揺れや…

ポール・パレーのルーセル

ポール・パレーのルーセルを聴きました。先日タワー・レコードから復刻された≪ポール・パレーの芸術≫第四集に収録された、へ調の組曲と『くもの饗宴』組曲の二曲です。断然すばらしいのは、後者の『くもの饗宴』でした。響きのパレットがとにかく多彩で、オ…

ロミオとジュリエット

プロコフィエフのロミオとジュリエットはチェリ様の十八番中の十八番で、ティボルトの死はアンコールの定番としてもお馴染みでした。 (a)ベルリン・フィル(一九四六年ライヴ) (b)フランス国立放送管(一九七四年ライヴ) (c)ロンドン響(一九七八年ラ…

シュトゥットガルトの春

(ここの続きです)シュトゥットガルト放送響を指揮した一九八一年ライヴはDGGからも一部がリリースされているプロコフィエフの≪ロミオとジュリエット≫と同日の演奏です。七十歳前後というと指揮者としてもっとも脂の乗り切った時期とよく云われますが、この…

ミラノの春

チェリビダッケは後年に至るまでシューマンの交響曲をしばしば取り上げましたが、第一番だけ、残念ながらミュンヘン・フィルとの録音を聴くことができません。うちにあるCDは以下の四枚です。 シュトゥットガルト放送響(一九六三年ライヴ、ARLECCHINO) ミ…

謹賀新年

あけましておめでとうございます。われながら分かりやすいことに毎年聴き初めはチェリ様です。今年はベルワルドの交響曲第三番にしてみました。スウェーデン放送響を指揮した一九六七年の録音です。一楽章がはじまって約二分間の、聴こえるか聴こえないかの…

ミュンヘンの第九

ミュンヘン盤を聴いてまず感じられるのは、かつての熱狂はもはや過去のものとなりにけりということでしょう。特に第一楽章。よそよそしいと云ってもいいくらいで、トリノ盤にひきかえ、チェリ自らの云う構成上のアラが却って耳につくような印象さえあり、さ…

今度こそ

第九といえばチェリ、という人はまずいないと思いますが―― チェリの第九には若いときのトリノ・ライヴとミュンヘン・フィルとの共演が遺されています。その間三十年かそこらの歳月を閲しているだけにさまざまな相違点があって、比較すると興味深いです。まず…

そういえば

ブルックナーの交響曲でもとりわけ難解といわれる第五と第九の二曲の改訂版が、とりわけ「改竄度」が高くなっているのは、偶然としては出来すぎの部類に入るのではないでしょうか。第五に関しては先にチラと触れましたが、第九の改変度の高さも驚くべきもの…

第五つながり

今更云うまでもないことでしょうが、わたしはチェリ教徒なのでもちろんブルックナーもチェリ様がデフォです。先日聴いた一九八六年ベルリン・ライヴの第五ですが、「ああ、チェリだ……」と感じ入ったのは一楽章のちょうど真中辺、[11:42]以降でした。あるかな…

チェリビダッケとフランス国立放送管(九)

先日の続きということでシューベルト二曲です。交響曲第五番は、昔懐かしいARKADIAから出ていた既出音源です。ARKADIAといえばアレですよ、「最高傑作」とか「マスターピース」とか「ALL WE NEED IS LOVE」のアルカディア(分かる人だけ懐かしがってください…

チェリビダッケとフランス国立放送管(八)

以前取り上げたラ・ヴァルスの元ネタたるウインナ・ワルツをチェリビダッケは意外とよく振っています。ラヴェルは元来パロディーだから善き市民たる紳士淑女が踊るにはふさわしくない危険きわまる音楽になったのもむべなるかなですが、本家本元たる善男善女…

チェリビダッケとフランス国立放送管(七)

ルーセルの第三交響曲も、WME盤(WME-S-CDR-1125)が初出のレパートリーです。以前ちらっと触れたようにEMI正規盤の小組曲とヘ調の組曲があまりにすばらしかったので、演奏記録の伝わるシンフォニーをぜひ聴いてみたいものだと思っていたところでした。ルー…

海とチャンバラ

というわけで聴いてみました、ベルリン・フィルの海(……何でやねん)。一九四八年ライヴですが結構音は良いです(MUSIC & ARTS; CD 1079)。栴檀は双葉より芳し、で明瞭にチェリビダッケの個性が刻印されています。 ピンと意思的なものが張り詰めたフレージ…

チェリビダッケとフランス国立放送管(六)

先述したように、チェリとフランス国立放送管のライヴは数こそ少ないものの昔からポツポツとリリースされていました。プロコフィエフのロミオとジュリエットのようにCD-Rで再出したものもありますが、一九七四年ライヴの海はたしかANFで一度出たっきりではな…

チェリビダッケとフランス国立放送管(五)

(まだまだ続く)≪ロザムンデ≫序曲は豊かな陰影、彫りの深さにおいて際立ち、現に生きるシューベルトの力強さを感じさせるでしょう。柔らかな幻想味(たとえばコンツェルトハウスの奏でる弦楽五重奏曲のような)を求めるなら他の演奏を当たらなくてはならな…

チェリビダッケとフランス国立放送管(四)

(まだ続く)ドヴォルザークのチェロ協奏曲もけっこう同曲異演があるはずで、同じフルニエ/ORTF管とはスタジオで映像収録も行われています。わたしが聴いたことがあるのはマヒュラ/ベルリン・フィル、デュ・プレ/スウェーデン放送響、シフ/ミュンヘン・フィ…

チェリビダッケとフランス国立放送管(三)

ラ・ヴァルス、メタボールと来たのでベートーヴェンの七番も聴いてみます。この曲はチェリの十八番だけあって録音も数多く、わたしが聴いた限りでもフランス国立放送管盤が四つ目の同曲異演となります(もうひとつ半端モノもあり)。 シュトゥットガルト放送…

チェリビダッケとフランス国立放送管(二)

先日取り上げたラ・ヴァルスが収められている(WME-S-CDR-1105/6)は二枚組CD-Rで、一九七四年十月の演奏会をアンコールまで収録したものです。 シューベルト:≪ロザムンデ≫序曲 ドヴォルザーク:チェロ協奏曲 デュティユー:メタボール ラヴェル:ラ・ヴァ…

チェリビダッケとフランス国立放送管(一)

そろそろ好き放題行きます。チェリビダッケは一九七三年から七五年にかけてフランス国立放送管にしばしば客演しました。その記録が、以前からぽつぽつ出ていたのですが、最近集中的にリリースされました(もっと出るのでしょうか。だったらうれしいのですが…

音楽の流れに身をゆだねて

(承前)チェリ道の先達、齋藤純一郎氏は「チェリビダッケ以前とチェリビダッケ以後」すなわち「どんな曲であれチェリビダッケの演奏を聴くと、それまで持っていた先入観念がガラッと変わってしまうという現象のこと」*1について語っておられますが、これは…

一種のあとがき

前回は聴いたことのないCDを推薦するという宇野御大もびっくりの無責任っぷりが炸裂してますが、わたしが非マニア対象にチェリを語るということ自体に無理があるのでその辺はスルーしちゃってください。……というか。 チェリ様が御存命中は海賊盤を使って布教…

はじめてのチェリビダッケ

さてここから本チャンですが、最初ということでここはひとつ、わが最愛の指揮者チェリビダッケを聴いたことがないけどまず何を聴いたらいいの、という方を想定してわたしなりのオススメを考えてみます。手始めとして、重要と思われる要素を箇条書きしてみま…