チェリビダッケとフランス国立放送管(三)

ラ・ヴァルス、メタボールと来たのでベートーヴェンの七番も聴いてみます。

この曲はチェリの十八番だけあって録音も数多く、わたしが聴いた限りでもフランス国立放送管盤が四つ目の同曲異演となります(もうひとつ半端モノもあり)。

  • ベルリン放送響(前半楽章のみ、一九五七年ライヴ、ARKADIA)

第一楽章は輝かしく晴れやかで、テンションの高さはこのコンビならでは。さすがにコーダの森厳はミュンヘンに一籌を輸するとはいえきわめて充実した演奏です。弦の表情的な音色が生きたアレグレットの哀しみは聴き手の心にすぐと迫るものがあるでしょう。そしてキレの良い後半楽章。聴衆の反応も実に熱狂的です。

この曲に対するチェリの観点はきわめて早い段階で定まっており、ベルリン放送響(これはチェリにとって特別なコンサートの記録で、師ハインツ・ティーセンの生誕七十年を祝した記念演奏会であるのみならず、ベルリン・フィル追放から三年後、初のベルリン復帰公演でもありました)からミュンヘンに至るまで本質的な部分では変化していないと思いますが、チェリとフランス国立放送管の出会いの妙味がよくあらわれたこの演奏は、怒濤なす激情のティーセン喜寿ライヴ、円熟の極みのミュンヘンと並んで特別な注目に値します。これで編集の瑕(前述)さえなかったらなあ。

あ、ちなみにこの曲の演奏時間です。







第一楽章
第二楽章
第三楽章
第四楽章
チェリ/ORTF
14:06
9:06
7:44
7:15
チェリ/ミュンヘン
16:06
9:46
9:04
7:55
(参考)クレンペラー/NPO
(EMI)
13:53
10:27
9:11
8:51

……まるで参考になりませんな。

しかし、他の指揮者にチェリより遅い演奏されると何となく「負けた……」ような気がするのってわたしだけでしょうか(完全にヘンタイ)。