謹賀新年

あけましておめでとうございます。

われながら分かりやすいことに毎年聴き初めはチェリ様です。今年はベルワルドの交響曲第三番にしてみました。スウェーデン放送響を指揮した一九六七年の録音です。

一楽章がはじまって約二分間の、聴こえるか聴こえないかの最弱音から力強いフォルティシモに至る幅広く精妙なダイナミクスからしてチェリ以外の何物でもありません。最初のクライマックスの晴朗さと壮麗なスケール感にはさながら山頂の高みから見下ろす風景のパースペクティヴを思わせるものがあり、音楽は清爽な高山の気に充たされています。

どこまでも澄みとおった透明感あふれる二楽章は蓋しこの演奏の白眉です(ことに中間部の行進曲のあとに回帰するアダージョの深い広がりには息を呑む思い)。フィナーレはけっこう癖の強いリズムを巧みにさばいた躍動感といい、先行楽章の主題を再帰させる運びの有機的な意味深さと云い巨匠のベスト・フォームを伝えるでしょう。再現部以降の白熱も尋常ならざるものがあります。

ベルワルドという作曲家自体これを聴いたのが初めてでしたが、チェリ様の演奏を通じて出会うことができたのはこの上ない幸福です。何度聴いてもみずみずしく、若々しい情熱に圧倒されます。EMIの正規音源全リリース中最高の仕事のひとつでしょう。

今年もこれまで同様ぼちぼち更新してゆければと思っております。暇潰しにお越し頂けますようでしたら幸いです。