海とチャンバラ

というわけで聴いてみました、ベルリン・フィルの海(……何でやねん)。

一九四八年ライヴですが結構音は良いです(MUSIC & ARTS; CD 1079)。

栴檀は双葉より芳し、で明瞭にチェリビダッケの個性が刻印されています。

  • ピンと意思的なものが張り詰めたフレージング
  • もどかしさと無縁、盛り上がるときはとことん昂揚するドラマ性
  • 正午前の叫び[9:39]

フルトヴェングラー在世時の重厚なベルリン・フィルを果敢にドライヴしていることから無類の迫力が生まれます。単にダイナミックというのではなし、何かしら根源的に迫り来るものを感じるのはわたしだけではありますまい。これだけやってくれたら後年の演奏とは別物とみなすべきで、すでにひとつの完成態に至っている海です。

それと感じたのはこの演奏の「戦後」性で、このギラギラした迫力は若い頃の三船敏郎に通じるものがあるかもなあ、と。元来小器用な俳優ではなかった三船の、だからこそ凄まじい気迫に溢れた殺陣。古参団員相手に奮闘するチェリ(男っぷりの良さまで三船ばり)。わたしの知らない時代の神話的一ページですが、なんと生々しい……