期待はしているんだけど

NHKのBSで、ベレゾフスキーがチャイコフスキーの第一協奏曲を弾いていたので見てみました。とりあえず第一楽章。

このピアニストは十数年前に一度ナマで聴きましたが、そのときとほぼ同じ印象。

大体、あのヌボーっとした風貌そのままの音楽、といえば分かりやすいでしょうか。こういうとベレゾフスキーには申し訳ないけど、大味で、ひらめきもなければ愛嬌もアルコール的興奮も感じられない、ただ音が大きいだけのボソボソしたピアノです。

そのくせ、このピアニストは、ピアノ、ピアニシモを弾くとこれがべらぼうにきれいな音で、人三熊七みたいなベレゾフスキーのどこにこんな繊細で感じやすい魂が潜んでいたのだろうか、と不思議なくらいです(こっちの方がよほど失礼か……^^;)。

曲がチャイコでなかったら、と思わなくもないところですが、この曲にも少しくらいは緩徐部がありますので、そういうところはほんとうに良いです。心にくい、といってもいいくらいで、かかる美質は、プレトニョフにも、キーシンにも、ヴォロドスにもない、ベレゾフスキーだけのものだと信じます――ただ、この緩徐部のためだけに、残りの部分でバターもジャムもつけずにパサパサした黒パンをかじっているかのような味気ない思いを我慢できるかどうか。これが問題です。

実演でシューマンの協奏曲を聴いたときは、このピアニストは化けたらすごいかも、はやく化けてくれないかな、と思ったものですが、いまのところその気配はないみたいですね……