『遺作変奏曲』について

シューマンの交響的練習曲には、遺作変奏曲と総称される五つの断章があります。作曲家本人が書いたはいいものの、推敲の過程で本編に含めることを断念した曲たちですが、無視してしまうには惜しい美質を含むため、コルトー以来それを本編とともに演奏するピアニストは少なくありません。

もちろん主題と十二の練習曲からなる本編のみを演奏するピアニストも多く、作曲家が思い描いた楽曲の構造を損ねるから遺作変奏曲は弾くべきではないとする意見があります。これは一々御説ごもっともではありますが、わたしとしては、これら変奏曲のうつくしさを前にして素通りすることができず、それをあえて弾くことを選んだピアニストたちの思いを尊びたいです。

遺作変奏曲にはどのようなかたちで弾くべきかという問題がつきまといます。録音であれば、補遺としてフィナーレの後に五曲まとめて収録することもできますが、実演でそうするわけにも行きますまい(いくらなんでも衒学的にすぎます)。勢い、曲間にそれらを挿入して演奏することになりますが、それはシューマン自身を大いに悩ませた難問でもあり、畢竟「正解」はないのです。


メルニコフが遺作変奏曲の一部を弾いていたことは先日述べたとおりですが、それを聴いてあらためて遺作変奏曲に対する興味を感じました。手持ちの演奏*1ではどのような配列で演奏されているかを表にしてみましたが、けっこう人それぞれで面白かったです。



コルトー ソフロニツキー ジャン=
フィリップ・
コラール
リヒテル
(1956)
リヒテル
(1972)
ヴェデルニコフ グリンベルグ メルニコフ
Theme
Etude I
Var.I
Etude II
Etude III
Etude IV
Etude V
Var.IV
Etude VI
Etude VII
Var.II
Var.V

Etude VIII
Etude IX
Var.III
Etude X
Etude XI
Finale


Theme


Etude I



Var.I



Etude II


Etude III


Etude IV


Etude V



Var.IV



Etude VI


Etude VII



Var.II


Var.V



Etude VIII


Etude IX


Etude X


Etude XI


Finale



Theme


Etude I



Var.I



Etude II


Etude III


Etude IV


Etude V



Var.IV



Etude VI


Etude VII



Var.II



Etude VIII


Etude IX



Var.III



Etude X


Etude XI



Var.V



Finale



Theme


Etude I


Etude II


Etude III


Etude IV


Etude V



Var.I


Var.II


Var.III


Var.IV


Var.V



Etude VI


Etude VII


Etude XI


Finale



Theme


Etude I


Etude II


Etude III


Etude IV


Etude V



Var.I


Var.II


Var.III


Var.IV


Var.V



Etude VI


Etude VII


Etude VIII


Etude IX


Etude X


Etude XI


Finale



Theme


Etude I


Etude II


Etude III


Etude IV


Etude V


Etude VI



Var.I


Var.II


Var.IV



Etude VII


Etude VIII


Etude IX



Var.V



Etude X


Etude XI


Finale



Theme


Etude I


Etude II



Var.IV



Etude IV


Etude V


Etude VI


Etude VII


Etude VIII


Etude IX


Etude X


Etude XI


Finale



Theme


Etude I


Etude II


Etude III


Etude IV


Etude V


Etude VI


Etude VII



Var.IV


Var.V



Etude VIII


Etude IX


Etude X


Etude XI


Finale

*1:ヴェデルニコフ盤のみすでに手放しています……ちょっと勿体なかったかな。