とことんラテンな愉しいシューマン(主にオケが)

シェベック/フレモー/パドルー管によるシューマンのピアノ協奏曲をひさしぶりに聴きなおして、思った以上に楽しむことができました。

シェベックのピアノは、劇的に盛り上がる場面など音の運びがいささかストレートにすぎて、スケール感に乏しい憾みがありますが、やわらかいタッチで奏でられる弱音部のインティメートな温もりと夢みるようなファンテジーには等身大のシューマンが感じられて、味わい深いものです。

一方、フレモーの指揮はアバウトかつ微温的、これではソリストがかわいそうという水準に近いです――が、そのかわり、ある意味野放し状態のオケの「フランスなまり」がなかなか面白いことになっています。

なんといっても傑作なのがフィナーレのホルン、じゃなかった、コルでしょう。鼻にかかったようなヴィブラート、ふわっと空気中に浮遊するようなひびきの軽い質感は、「勇壮」「剛毅」といった王道・角笛系ホルンのベクトルの真逆を行く恰好。

まあ、違和感がないとはいいません(正直なところ、最初聴いたときは悶絶した)が、この愉快なシャレのめしっぷり、世の中にひとつくらいこんな演奏があったっていいじゃないかと思えてきます。

――もっとも、ふしぎなもので、同時期のフランス国立放送管(フランソワ/クレツキのEMI盤)を聴くと、ヴィブラートこそたっぷりかかっているものの、あそこまで悪目立ちはしていなかったし、第二次大戦前の覆面オーケストラ(ナット/ビゴーのコロンビア録音)も同様――「見識」というやつでしょうか(^^;