実は

まっとうに良い演奏だったりするのが、ゴロワノフのスクリャービンです。この指揮者がただの変人ではなかったことがよく分かると云うもの。

今回はプロメテウスを聴きました。わたしの手持ちのDANTE盤には一九四七年録音とありますが実際は一九五二年録音らしいですね。ダンテによくある著作権がらみの隠蔽工作と見えます(要するに五十年経ったフリ)。ピアノは泣く子も黙るゴリデンウェイゼル御大。

演奏は序奏の猛烈な、それでいて深々としたクレッシェンドからして聴く者に底知れない戦慄を伝えずにはおきません。当時にあっては随分な「ゲンダイオンガク」であったはずのこの曲ですが、このように強く踏み込んだ、肉感的でさえある表現がなされているのもひとえに指揮者のスクリャービンに対する深い傾倒あってのことでしょう。燃えるゴロワノフと冷厳なゴリデンウェイゼルがお互い変に譲らず丁丁発止してます。途方もない曲の途方もない演奏です。