私的十大レーベル(六)

雑談つながり。日本で作って日本製を標榜する漢気のあるレーベルが過去には存在しました。まあ、その頃は違法ではなかったからといってしまえばそれまでなのですが。

WINGは趣味性が強いを通り越している気配がなきにしもあらずな歴史的録音ばっかり復刻していたレーベルです。第九の初録音とか「サラサーテの芸術」とか。エアチェックものもあるのですが、クリストファ・N・野澤氏かその周辺のコレクションと思しきレコードの復刻がきわめて貴重なものでした。エネスコのシューマンソナタも最初に出してくれたのはここですし、スポルディングとドホナーニのブラームスもありました。アンゲルブレシュトのCD(WCD 60)の中身は大方テスタメントからも復刻されましたが、マ・メール・ロワとか、WING盤と比べてしまったらテスタメントの曇りがかかったような音では聴けたもんじゃないと思うのはわたしだけではないでしょう。

ここの血脈が流れ着いた先がVENEZIAとグリーンドアらしいのですが、前者はとうに休眠してまいましたし、後者はというと不正確なピッチ(音痴のわたしにも違和感バリバリでした)など復刻水準で大いにミソをつけて、先年とうとうお亡くなりになりました(ここがエネスコの無伴奏を復刻したというのがとんだ笑い種です。売れるわけがない)。

前者では結構買い逃してしまったものが多く、ティボーとエネスコのモーツァルト(DOREMI盤には肝心の六番が入っていません)、ストコフスキと組んだスペイン交響曲などなど、未練が残ります。わたしが聴いた中では、ティボーのベートーヴェンの協奏曲が期待したほどではなかったのが残念でした(今はTAHRAでも聴けます)。

後者はねえ……ローゼンタールのショパンの協奏曲を掴まされたときは二度と買うか!と思いましたよ。ゴーティエ/ルフェビュールのラヴェルなんかも、金盥を叩いたようなあのピアノの音、レコードの吹き込み自体がこうなんですか?まさかねえ……素人のわたしが言うのもなんですが、レコードの再生自体が下手すぎて、これじゃあ復刻以前の問題です。

ただし、最後の最後にコルトーのチェトラ/ロココ録音を二枚出してくれて、それが許せる復刻音質であったことは、とても有難かったです。

そして日本発のアヤシイCDといえば忘れていけないのがANFソフトです。チェリ様では≪ローマの謝肉祭≫序曲の美しさが悶絶ものでしたねえ。ダフニスとクロエの第二組曲もここの盤がわたしの処女聴でした。某所でこのレーベルのカタログが掲載されてまして、そうそう、ほんまに変なCDが多かったなあ、と懐かしくなりました。ペーター・マークの惑星など、今となっては聴いときゃよかったなあと悔やまれます。