愕然

北欧ものと同じくらいゴロワノフから遠い位置にあるのがモーツァルトの音楽でしょう。そんなレパートリーに限ってきちんと録音があるのがゴロ道の無間地ご……いやいや醍醐味というものです。

曲はレクイエムですぜ。聴いてる方が死にそうです。

ゴロワノフはキャリアの初期に合唱指揮をやっていたそうですが、その手腕のほどを窺い知ることができる数少ない録音ということになります。いまどきの、歌っているのが人間なのか機械なのかと思うように精緻きわまるハーモニーからは随分かけ離れていますが、旋律線を強く出して、その絡み合う動きなども生々しく迫ってくるあたりはこの指揮者ならではのうまさかと思いました。表現力の旺盛な声楽です。

……が、全体的には意外とマトモだと思いました。ゴロ印の妙なテンポの伸び縮みも(ないとは云いませんが)控えめですし――

わたしのなかで人間として大切な何かが、だんだんと、しかし確実にマヒしているようです(笑)。