ガッカリもしません

NHK教育の芸術劇場でグスターボ・ドゥダメルの映像をみました。手兵(なんだろうなあ)のシモン・ボリバル・ユース・オーケストラとの来日公演と、ベルリン・フィルを指揮したワルトビューネ・コンサートの二本立てです。

全部を見たわけではないし、テレビのジャックにヘッドフォンをさしての視聴なので何とも云えない部分があるのですが、まず気付かれたのは、意外なくらい丁寧な演奏だったことです。特にダフニスとクロエの第二組曲の緩徐部では、音楽のつながりと方向性に非常な神経を遣っていることが伺われました。ユース・オーケストラがラヴェルをやるとは無謀なような気もしたのですが、プローベに時間をかけられる分、かえって指揮者のやりたいことができている面もあるでしょうか。画面を見ていて、トランペットが八人という物量作戦ぶりには「ブル五の終楽章コーダじゃあるまいし」と驚きあきれましたが、意外なくらい、派手で表面的な効果には見向きもしません(現実問題としては若い奏者の力量の限界を頭数で補わざるをえないのでしょう)。少なくとも、聴いていて心筋梗塞の発作を起こしそうになるようなことはない分、アッ○ードなぞよりはよほど真っ当な指揮者であると云えなくもないでしょう。

一方で、まだ二十八歳なのにこんなもんかぁ?――といいたいくらい「突き抜けた快感」がありません(たとえば全員の踊り)。早くも音楽が小さくまとまりかけてしまっているのです。それに加えて「毒」もない。指揮姿を見る限りはさも雄弁そうなのですが出てくる音楽はきわめて常識的でした。一般論として、今のうちにとんがった音楽をやっておかないと、あとは角が取れてゆく一方で、ジイサンになったら毒にも薬にもならんなぁこりゃ、てことになるであろうと思うのですが。

いっそ乱暴であざといところがあるくらいの方が、今後に期待もできたのに――(ゲル○エフみたようにあのトシになってもあざといだけじゃこれまたゲンナリですけど)