三重のショック

昨年リリースされたコルトーのEMI録音集については、わたしも先にこちらで取り上げていますが、HMVの商品データをご覧になれば一目瞭然、フォーレの第一ソナタはわたしの期待していたアコースティック録音ではなくお馴染みの一九二七年録音でした。それほど期待していなかったとはいえ、ガッカリです。

一方、「これって一体いつの演奏のことなんだろう」といぶかしまれたドビュッシー前奏曲集は、意外にも発売前のインフォメーション通り「1937年、1931年、1947年、1949年」録音が収録されました。一九三一年(亜麻色の髪の乙女)、一九四七年(沈める寺)、一九四九年(パックの踊り)の各録音は既知の演奏ですが、残る「一九三七年録音」の九曲は、そのようなレコードがあるとは思うだにしなかったもので、データが真実であれば非常な発見ということになるかと思います。

ざっと聴いた感じでは、三十年代のコルトーの演奏ということには違いないものの、既出の一九三一年録音と別物かどうかまでは確信が持てなかったのですが、今回少し念入りに聴き比べてみたところ、残念ながらこれらはやはり同一の演奏であるように思われます。たとえば「西風の見たもの」の[1:56](これはEMI盤のタイミング)で右手が全く同じ弾き間違いをしています(もしかしたら意図的な「装飾」なのかもしれませんが、少なくとも一九四九年の再録音ではこのように弾いていません)。

――半日というもの耳にタコが出来そうなくらいドビュッシーを聴きまくって、ようやっと分かったのは、つまるところこのボックスが全くのムダな買い物だったということでした……