『ツィゴイネルワイゼン』(鈴木清順、一九八〇年)
『ツィゴイネルワイゼン』を見ました。
監督の鈴木清順は「お前の映画は訳が分からん」といわれて日活をクビになったひと。雌伏十年、返り咲きしてからは以前にもましてワケがわからない映画を撮りつづけました。これは復活後のアート(?)路線の作品です。*1筋はあってなきが如しなので紹介もしまへん。
何がすばらしいって、大谷直子の腰が蕩けそうなくらいの美しさ、まずはこれにつきるでしょう。原田芳雄が彼女の真っ白な二の腕にむしゃぶりついているシーンには魂が震えました。いわんやコンニャクをぶちまけて「今日は帰らないでください……!」なんて言われたらもうどうしていいかわかりませんよアナタ。主役なのに新人より脱ぎっぷりが良いのもうれしすぎます(さっすが、デビュー作が『肉弾』だけのことはある)。
個人的に、大楠道代は、安田時代からいいと思ったためしがありません(『氷点』なんて、ドラマ版の内藤洋子の方が絶対いいよ……)。巷で話題の眼球ペロペロも、エロというよりは卑猥、きたならしいという感じがして、高貴にして凄絶な官能美を発散してる大谷直子のほうが好きだなあ……
それと藤田敏八も妙に面構えに味があってよろしい。パキスタンの皇太子、略してパキさんたぁ上手いことをいったもんです(伊藤雄之助を洗練させた感じ、とでもいおうか)。こういう人に、固い、固くあろうとしている独文学者役を振るのはいいセンスのキャストだなあと感心。最後の最後で、やっぱり……とすごく納得できるし。*2
カニさん巨大化とか、ふたりの盲人の決闘とか、純粋に腹を抱えて笑ってしまいます。別になにも「不可解」ではありません(むしろ音の使い方のほうがずっと意味深なのでは)――が、一箇所だけ、大谷直子の指パッチンには途方に暮れてしまいました。