名誉挽回

展覧会の絵については、比較対象が対象だったこともあってちと辛口になってしまいましたが、ヴィニツカヤ嬢のプロコフィエフの第七ソナタはいい演奏でした。ムソルグスキーより格段に曲が良くできている(あくまでピアノ曲として、ですが)こともあって、彼女の美質がストレートに伝わってきます。

とくに一楽章がすばらしいです。構造の把握が明晰で、不協和音の塊のような第一主題の生き生きとした躍動感と繊細な叙情性をたたえた第二主題との鮮やかなコントラストを、いかに入り組んだ場面でも余裕を感じさせる水際立ったヴィルトゥオジテが支えています。第二主題の流れに第一主題のモティーフがまぎれこんできて再現部へとなだれ込む運びも、両主題の適切な描き分けがあってこそ生きてくるものでしょう。しかも全体の流れはきわめて伸びやかで、みずみずしい情感にあふれています。

こんな演奏を聴くと、若いっていいなあと思いますね。注文をつける気も起きず、ただただ魅惑されていたいです。