フランソワのマズルカ

これまで、あまり気に入っていなかったフランソワのマズルカを久しぶりにまた聴いてみたのですが、ひとつだけ分かったことがあります――グレアム・グリーンが自作を"Novel"(たとえば『情事の終わり』)と"Entertainment"(『ヒューマン・ファクター』など)とに分類していたのは周知の事実ですが、あえてそれになぞらえていえば、フランソワはおそらく、マズルカをワルツと同類の音楽(有体にいってしまえば、サロン・ピース)とみなして弾いているのです。

だから演奏として出来が悪いというのではありません。とくに初期作品などさすがに上手いなあと思います――が、ワルツならこれでいいかもしれないけど、マズルカとしては……という違和感は最後まで拭いきれません。

わたしとしては、「フランソワのショパン」が聴きたいときはエチュードあたりのCDに手が伸びますし、マズルカを聴きたいときは、これまでと同様、ソフロニツキーやアンドレ・チャイコフスキーで、となるでしょう。