フランソワのワルツ

そのかわり――といっては何ですが、フランソワのワルツはいいですね。彼の持ち味もマズルカ以上に生きていると感じます。四分以上かかる第八番みたいに異様なナンバーもありますが、それもアクセントだと思えば……(^^;

なんといっても印象的なのは別れのワルツでした。ショパンとヴォジンスカ嬢の悲恋は周知の事実ですが――これはわたしだけでしょうかしらん――実態はプラトニックでおぼこい純愛であろうと何となく思い込んでいました。しかるに、フランソワの演奏で聴くと、ここで追憶されているのは甘美な官能の記憶以外の何物でもないのです。

まあ、いいトシしてそれくらいでドキドキしてもいられないし、個人的には、実事がなかったからこそ彼女との思い出が「わが哀しみ」であり続けたのではなかろうか、と思ったり思わなかったり……

ちなみに、ステレオ録音の「ショパン名曲集」に収録されている同曲異演こそ、全曲盤に輪をかけて艶かしいドキドキものの演奏です(笑)