手帳の断章

ティボーを褒めたつもりで「これぞフランスの音、パリのエスプリ」と抜かすバカがいます*1が、これは実際のところ何もいっていないに等しいわざです。なぜといって、当時のフランスにもたくさんヴァイオリニストはいましたが、ティボーのようなヴァイオリニストは断じて彼ひとりだけだったのですから――たとえばアンリ・メルケルのスペイン交響曲など、間奏曲を弾いているのが辛うじて取り得というようなシロモノで、少なくともわたしは、ティボーの美技に酔いしれたあとでこれを聴く気には到底なれやしません。

思うに、ティボーがほかのフランス人演奏家とどこがどのように違っていたのか、それこそが問題なのです。

*1:いっそ、直でリンクしたろうかとさえ思う。