ロシアつながりで

スヴェトラーノフと云えば爆演野郎として名高いですが、リヒテルのこの人に対する評価は、あまりよくない意味で才人指揮者、というものでした――多くの人にとっては意外なことかもしれません。

実は、ローマ三部作やスクリャービン交響曲を聴いてきた限りではわたしの感想もリヒテルのそれに近いように思います。スヴェトラーノフの名を広く江湖に知らしめた前者も、人が云うほど凄まじいかと云われたら……

たとえばローマの松の最後の引き伸ばしですが、こりゃスゴいというよりは、出来合いのカレーにカイエンペッパーを真っ赤になるくらい振り込んで「激辛カレーで御座い」と云われたような、何だい安直なことをしやがってという思いがぬぐいきれません。アッピア街道の松全体を通して真に壮大なスケール感があるかと云われたらわたしはそうは感じませんでした(ただし、よほどのことがなければレスピーギの曲自体チェリ様のローマの松以外は聴かない人間の片寄った意見であることはお断りしておきます)。

スヴェトラーノフとチェリを比べても無意味だと思うのであえてゴロワノフと比べますが、スヴェトラーノフには今一つ狂いきれないもどかしさをわたしは感じます。



……いや、あそこまでやる必要は全くないんですが……


そう考えると昨今のスヴェトラーノフ人気にもけっこう納得がゆきます。たとえて云えばスヴェトラーノフは日本人向きにアレンジしたエスニック料理で、ゴロワノフはネイティヴによるネイティヴのための「現地の味」なのです。幅広く受け入れられるのは前者の方ですが、後者を知ってしまった者にはその口当たりの良さがかえって物足りなく感じられる……という。

リヒテルにゴロワノフのこともどう思うか訊いてみたかったです。