2009-01-01から1年間の記事一覧

デュオについて――マイナルディとゼッキ

わたしがエンリコ・マイナルディの名を知ったのは、ご多分に洩れず、フィッシャー・トリオのチェリストとしてでした。就中ブラームスの第一三重奏曲の緩徐楽章におけるチェロ独奏の心にしみ入るような歌心は他のいかなる演奏とも比較すべくもないような素晴…

ポール・パレーのルーセル

ポール・パレーのルーセルを聴きました。先日タワー・レコードから復刻された≪ポール・パレーの芸術≫第四集に収録された、へ調の組曲と『くもの饗宴』組曲の二曲です。断然すばらしいのは、後者の『くもの饗宴』でした。響きのパレットがとにかく多彩で、オ…

モーラ・リンパニーのシューマン

モーラ・リンパニーのシューマンのピアノ協奏曲を聴きました。一九四六年、ビーチャム指揮ロイヤル・フィルとのライヴ録音です。ロイヤル・フィルはこの年の九月に設立されたばかりでその最初期の録音にあたるのだとか。この年代にしてはしっかりした音質で…

ダヴィドヴィチのショパン

ダヴィドヴィチのショパンを聴きました。ブリリアントからリプリントされたバラード、即興曲、プレリュード集等の西側録音です(cf.→HMV)。ダヴィドヴィチ自体、夫君シトコヴェツキーとのデュオ(※)くらいでしか聴いたことがないので予断はないつもりでし…

うらみぶし

DOREMIは「よくぞこんなものを出してくれた」といういい仕事(たとえばオドゥノポゾフのコンサートホール音源の復刻やアニー・フィッシャーの映像など)が多い反面、「第一集」を出したあとその続きがなかなか出ないという飽きっぽいところが困ったちゃんな…

また芸術劇場

先週の金曜日はラン・ランの来日公演をテレビで見ました。あいにく帰宅が遅くなって、ドビュッシーの前奏曲からになったのは残念。バリバリ弾けるピアニストだというのはおぼろげながら聞き伝わっていたところですが、想像以上に腕の立つひとだなあと思いま…

ガッカリもしません

NHK教育の芸術劇場でグスターボ・ドゥダメルの映像をみました。手兵(なんだろうなあ)のシモン・ボリバル・ユース・オーケストラとの来日公演と、ベルリン・フィルを指揮したワルトビューネ・コンサートの二本立てです。全部を見たわけではないし、テレ…

アニー・フィッシャーのショパン

アニー・フィッシャーはめったにショパンを弾かないピアニストだったといわれますが、モンサンジョンの『アート・オブ・ピアノ』をご覧になった方はエンド・クレジットで彼女の弾く生き生きとした子犬のワルツが流れていたことをご存知でしょう。昨年リリー…

ショパンのop.62-1のノクターン(承前)

他の演奏も聴いてみました。○遠山慶子女史による全集録音(カメラータ・トウキョウ)師匠のコルトーをして「あなたのショパンこそが本物だ」と云わしめた遠山女史のピアノは外側からあれこれ手を加えたような感じがせず、ひそやかな情感がそのまま音になって…

ショパンのop.62-1のノクターン

アラウの一九七一年アスコーナ・ライヴ(AURA)は数年来架蔵している盤ですが、先日聴き返して、ショパンのop.62-1のノクターンのすばらしさに今更ながら深く感じ入りました。このピアニストはどうも余程のスロー・スターターらしく、リサイタル冒頭のベート…

マックス・ロスタルのデッカ録音

マックス・ロスタルはどちらかというと名教師として知られていますが、演奏家としても、曲によってはかのブッシュをも凌駕した境地を示している大ヴィルトゥオーゾでした(たとえば、シューマンの第一ソナタやバッハのホ短調のソナタ、等々)。先日、久々に…